破産と免責
弁護士をしていると、個人の方から「破産して借金をチャラにしたいんです。」という相談を受けることがあります。
正しいこの質問に対する法的な回答は「×」なのです。破産法では、「破産」することと(破産法18条)、いわゆる借金チャラ「免責」とは別の手続とされており(破産法248条)、破産しても免責できない場合についての規定もあります(免責不許可事由・破産法252条)。つまり、破産申立てをしたけれども、借金はチャラにならないという場合があり得るのです。
もっとも、現在の運用において、破産したけど免責にならないというケースは稀です。破産は、債務を負った人の経済的な再出発を図る制度ですから、破産した個人に免責を認めないと破産制度を設けた意味がなくなるからです。
では、免責の決定がなされるとどんな債務でもチャラになるのでしょうか。この答えも「×」です(破産法253条)。例えば、車を運転していて赤信号を無視したら、青信号で横断中の人をはねてしまった場合、そのはねられた人の損害賠償請求権が免責になって一切支払わなくてよいという結論が不当であることは誰の目にも明らかでしょう。罰金や税金を支払えないからといって、免責されてしまうのであれば、社会の公平は保たれません。
結局、「破産すれば、借金はチャラ」という結論は、概ね正解ですが、不正義な場合、必ずしもそうではないのです。弁護士をしていると、破産する方の代理人、破産管財人、破産する方の取引先の代理人等、様々な場面で破産をみることになります。弁護士としては、どの立場に立つかで視点は変わりますが、基本的な公平を保ちつつ仕事をしていきたいものです。
2014年1月15日 10:39 PM | カテゴリー:倒産手続